コラム

糖尿病

膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンの作用不足により、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなるのが「糖尿病」です。
尿に糖が出ることから名付けられた病名ですが、これは血液中のブドウ糖が増えすぎて尿の中に糖が溢れてきた状態です。
病名の「糖尿」が問題なのではなく、「高血糖」が問題なのであり、本来なら「高血糖症候群」のほうが適切なのかも知れません。
血管や神経に障害を及ぼし、さまざまな合併症を引き起こすたいへん危険な病気です。
実際は血液中のブドウ糖の量(血糖値)をもとに診断します。

典型的な症状としては、口渇、多飲、多尿、体重減少、空腹(食べても食べても満足できない)、疲れやすいなどがあげられます。
しかしながら、ほとんど自覚症状がないという患者さんが大多数です。
すなわち、症状が出たときにはかなりの重症という場合が多い非常に怖い病気です。
糖尿病は、健康診断などの機会に早期に発見し治療を開始するべき病気です。
高血糖の持続は、急性あるいは慢性の合併症を発症します。

合併症には、網膜症(ものが見にくい)、神経障害(手足のしびれ)、腎症(足のむくみや尿たんぱく)、脳梗塞、心筋梗塞、、壊疽(足の潰瘍・足壊疽)などがあります。
合併症を発症すると日常生活に著しい障害をきたしますが、早期発見と厳格な血糖コントロールにより合併症の発症・進展阻止は十分に可能です。

日本における糖尿病の合併症による統計値
  • 網膜症による失明が年間3,500人以上
  • 腎症による新規血液透析が年間14,000人以上
  • 足壊疽による切断が年間3,000人以上
  • 心筋梗塞や脳梗塞の発症も増加
糖尿病になりやすい人
  • 血縁に糖尿病のいる人
  • 食べ過ぎ、飲み過ぎの人
  • 肥満の人
  • 運動不足の人
  • ストレスの多い人
糖尿病発病予防法
  • 腹八分目に食べて・・・
    脂肪を控え、多様な食品を組み合わせてバランスよく食べましょう。
  • もっと歩いて・・・
    1日20分以上歩きましょう。
  • 肥満を減らそう・・・
    適正体重を維持しましょう。
    適正体重(kg)=(身長m)×(身長m)×22
    (例)身長160cmの場合
    1.6m×1.6m×22=56kg

高血圧

「サイレント・キラー=沈黙の殺人者」と呼ばれ、自覚症状はありませんが、慢性化すれば血管に大きなダメージを与えるのが「高血圧」です。

年齢とともに血圧は上がる傾向にあり、現在、全国で実に約3,500万人といわれるほどです。
誰もがその原因や病態、治療法を知っておく必要があります。
高血圧は慢性化することで脳卒中や心臓病などの病気を引き起こす原因になります。

高血圧で脳の血管が破れると脳出血、詰まると脳梗塞になり、高血圧は心臓に負担をかけ、心不全や虚血性心疾患を引き起こす危険な病気です。

高血圧の原因

高血圧の場合、頭痛、めまい、耳鳴りなどの症状が現われる人もいますが、ほとんど自覚症状はありません。そのため、つい見過ごされがちですが、やがて動脈硬化を招き、心臓病や脳卒中、臓器不全などをもたらす恐い病態です。

高血圧には、いくつかの原因が複雑に絡み合っている(原因が特定できない)本態性高血圧と、腎臓病や内分泌系の異常が原因となった二次性高血圧があります。

日本では患者の95%以上を本態性高血圧が占めています。
本態性高血圧の原因としては、ナトリウムが蓄積されやすい、交感神経が緊張しやすいなどの遺伝因子と、塩分の取り過ぎ、肥満、喫煙などの環境(習慣)因子があげられます。
現在、日本における高血圧の人口は約3,500万人いるとされ、生活習慣病の代表といっても過言ではありません。

高血圧の割合は年齢とともに増加しますが、最近では若年層に高血圧が増加していることが問題となっています。

脂質異常症

血中脂質にはコレステロール、リン脂質、中性脂肪、遊離脂肪酸などがあります。
 血液中のコレステロール、中性脂肪など脂質の数値で診断されるのが脂質異常症です。
 血液中に多い脂質の種類により脂質異常症のタイプが決まってきます。

  • 総コレステロール値が高いタイプ
  • 中性脂肪値が高いタイプ
  • 両方の値が高いタイプ

血中脂質が高い状態が続くと狭心症、心筋梗塞などの心臓病にかかる危険性が高くなります。
脂肪分の取り過ぎなどにより脂質が増えると、血管そのものに影響を及ぼし、やがて動脈硬化が起こりやすくなります。
食生活の欧米化が進み、若年層にも増えている注意すべき病気です。

脂質異常症の原因

脂質異常症の原因と最も深い関係にあるのは食事です。
卵、肉・バターなどの動物性食品の脂肪の中に比較的多く含まれる飽和脂肪酸やコレステ口ールは、血中の総コレステロール値を高くする働きがあります。

逆に、魚や植物性の油に多く含まれる多価不飽和脂肪酸は、血中の総コレステロールの上昇を抑える働きがあります。
さらに、運動不足、食事からのカロリーのとりすぎ、遺伝による家族性脂質異常症などが原因にあげられます。

メタボリック

メタボリック・シンドローム

動脈硬化の3大危険因子として高コレステロール血症、喫煙、高血圧があげられ、特にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の役割が成因として重要視されてきましたが、最近はLDLコレステロールとは独立した動脈硬化の危険因子としてメタボリック・シンドロームが注目されています。

肥満はいろいろな病気の元凶です。

なかでも内臓脂肪型肥満は要注意。

息を軽く吐き、へその高さで腹囲を計り、男性で85cm、女性で90cm以上の場合は、内臓脂肪型肥満の可能性が大です。
内臓脂肪がたまると、脂肪代謝が以上になり、血圧が上昇し、血液中の糖分・中性脂肪が増えます。
それぞれの症状が軽度であっても、複数の症状が重なれば動脈硬化を進め、脳梗塞・心筋梗塞などを引き起こしやすくなります。
このような状態をいわゆる「メタボリック・シンドローム」と呼び、中高年になると太り、動脈硬化を起こしやすい患者さんが増えてくるので、高コレステロール血症に次ぐ危険因子として注意を促すために提唱されました。

内臓脂肪型肥満は万病のもと

なぜ、内臓脂肪型肥満が問題なのでしょうか?
インスリンは血液中の糖を調節する働きがありますが、内臓脂肪がたまるとインスリンの働きが鈍り、糖尿病や脂質異常症、高血圧になりやすくなります。
内臓脂肪の量はウエストサイズに反映しやすいため、内臓脂肪蓄積の目安として腹囲が取り上げられています。

どうすれば予防できますか?

内臓脂肪を減らすためには、生活習慣の改善を行うことが大切です。
ウォーキングなどの有酸素運動をできるだけ毎日続け、食事は腹八分目にして甘いものを控えます。
タバコはきっぱり止めましょう。
内臓脂肪型肥満を解消することがメタボリック・シンドロームを防ぐもっとも確実で身近な方法です。

メタボリック・シンドローム診断基準
必須項目

〇へその高さの腹囲
男子 85cm以
女子 90cm以上
 
上記に加えて以下の2項目以上
 
〇高中性脂肪血症
150mg/dL以上
かつ/または
低HDLコレステロール血症
40mg/dL未満
 

〇収縮期血圧
130mmHg以上
かつ/または
拡張期血圧
85mmHg以上
 

〇空腹時高血糖
110mg/dL以上

一方、京都大学教授 中尾一和先生は、「ウエスト周囲長 男性 86cm以上,女性 77cm以上」という診断基準を提唱されていますので、特に女性の方は油断は禁物です。

また、九州大学教授 清原裕先生は、14年間の福岡県久山町における調査結果では「腹囲が 男性 90cm以上,女性 80cm以上の方」「心血管疾患が多かった」と米国の医学雑誌に発表されました。(平成21年4月)

栄養食事指導

糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の治療の基本は、薬を使わない一般療法です。
一般療法の三本柱は、生活療法、食事療法、運動療法です。
このうち上手に食べる食事療法が治療の第一歩です。
当院では管理栄養士による個別栄養指導(予約制)を行っています。
尚、薬物療法が始まっても、一般療法は基本として続けていかなくてはなりません。